直近の各国経済政策と中国政府の気になる動向について
こんにちは、北田です。
今月から開催の東京オリンピックは、
東京での緊急事態宣言発令ということや、
各地でデルタ株の感染拡大懸念等もあり、
ほとんどの地域で無観客となりましたね。
このことは、
海外の投資家からしたら
結構インパクトがあったようで、
改めてデルタ株の脅威、
そして日本経済の悪化等も懸念され、
先週は日本株だけではなく、
米国株等も下落した相場となっていました。
ただ下落の要因はこれだけではなく、
他の要素等も加わっていたように思われます。
今回はこの辺りを深堀りしていきます。
直近の経済について:ドル編
まずはドルから見ていきますが、
先々週発表された雇用統計では、
非農業部門雇用者数では、
予想を上回った数字になったものの、
失業率に関しては
悪化した数字となったことで、
まちまちの結果となりました。
ただ、これに関しては、
失業率悪化によって
テーパリングが遠のくのでは、と市場が判断し、
米国株は上昇し、
ナスダックが史上最高値更新、
NYダウも史上最高値に接近。
そして、S&P500は7営業日連続で
終値ベースで史上最高値更新となっていました。
ただその後、
6月ISM非製造業景況指数、JOLT求人件数、
新規失業保険申請件数等が
予想を下回った数字となった為、
アメリカ経済回復の
頭打ちと判断されたのか、
その後は、
米国株全体も軟調な動きとなりました。
※週末は再度上昇し、
NYダウも史上最高値更新となりました。
そして注目されていた
FOMC議事要旨ですが、
緩和縮小開始の協議をしたことが
明らかとはなったものの、
経済の回復は
終了していないこと等も指摘され、
早期のテーパリングの必要性が
感じられなかった内容となり、
ドル買いが後退した形となりました。
また、ここ最近では
米中間のデカップリングも再来しており、
中国政府による、
米国市場への上場を制限する措置や、
中国の配車アプリ大手DiDi(滴滴出行)に対して
上場直後にサイバーセキュリティー審査を
実施する等規制強化。
さらに、
アメリカ政府は軍事情報を保持している
中国企業に対しての投資を停止する
大統領令も出しており、
米中間の報復合戦により、
株価が下落していると見ることもできます。
そんな中、気になるのが、
ドルと10年債利回りの推移です。
10年債利回りとドルの動きは
相関して動くことが多いのですが、
ここ最近は逆相関の動きとなっていました。
すなわちドルインデックスが
上昇しているにも関わらず、
10年債利回りは低下しているという状況です。
そのはっきりした要因は分かりませんが、
一つ考えられるとしたら、
現在、
世界的に金余りの状態となっており、
それが株式市場だけではなく、
債権市場にも流れたことで、
株価上昇、ドル上昇、
そして債権利回りの下落に
繋がったのではないかということです。
ただ先週のように、
さすがに利回りが下げ続けている中で、
ドルが買われ続けることも難しく、
結果的には
ドルも売られる相場となっていきましたので、
今後もやはり利回りが下落する以上、
ドルを買い向かっていくことは
難しいと見ておいたほうが良いでしょう。
そして、次の注目は、
8月のジャクソンホール会議、
ないしは9月のFOMCでの
テーパリングの示唆の有無でしょう。
2013年に当時のFRB議長のバーナンキ氏が
テーパリングの示唆をしたことで、
大きく株価が下落し、ドル円も下落した相場となった、
いわゆるバーナンキショックの再来となるかどうかが
テーマとなって動いていくと思います。
直近の経済について:ユーロ編
次にユーロですが、
先週ECBの戦略見直しが発表され、
中期的な物価目標を
往来は2%弱としてきたところ2%に修正、
さらにラガルド総裁が2%を上回るインフレ率も
許容する方針を示したことで、
事前に報道されていたような内容と
さほど大きく変わらない内容だったことから、
安心感によるユーロ買いが一時的に入りました。
しかしながら、
これは長期に渡って緩和策を
維持することになりますので、
やはり今後もしばらくは
ユーロを思い切って買っていけるような状況には
ならないと考えられます。
また先週末の欧州株は、
デルタ株の感染拡大の影響なのか、
米中のデカップリングの影響なのか、
大幅に下落していることもあり、
これが続くようでしたら、
よりユーロは下落する可能性もあります。
直近の経済について:ポンド編
次にポンドですが、
ワクチン接種率が高いイギリスでも、
デルタ株の感染が広がり、
1日の新規感染者数が
2万人を超えている状況が続き、
なかなか思い切って
ポンドを買っていけるような状況ではありません。
またベイリーBOE総裁のハト派的な発言や、
EUとの通商問題が続いていることも、
ポンドの上値を抑えている状況になっています。
直近の経済について:日本編
そして日本では、
東京都に4回目の緊急事態宣言が発令となり、
ほとんどの地域のオリンピック会場では
無観客となりました。
これが海外投資家から
結構ネガティブに捉えられたのか、
先週末は日本の株価は下落となっていました。
ただ先週8日、9日は
ETFの分配金を得る為の売却日となっており、
約8000億円が売られたことで、
TOPIX中心に売りが入ったという見方もできます。
さらに先週末金曜日はSQだったこともあり、
ヘッジファンドが仕掛け的な売りをし、
日本の株価下落、そして、
米国債利回りの下落で、日米金利差縮小による、
円買い動意も入ったように考えられます。
週末金曜日の後場は
リバウンドしていたように、
今後、日本株は
さらにリバウンドして上昇していくのか、
それともやはり日本売りとなって、
さらに下落が続くのかで、
円の売買に影響を与えていきそうです。
また海外投資家は、
投資先の国の、政権の安定を重要視しており、
今後の日本の政権運営にも目を向けられています。
ただ前回の都議選で、
自民党はなんとか第一党を取り戻したものの、
議席数は事前予測よりかなり低く、
敗北と見られています。
これはいわゆる秋までに行われる
衆議院選挙の前哨戦と見られており、
次回の選挙で自民党の議席数が減り、
求心力低下、そして菅政権も危ういとなれば、
政権不安による株価下落も考えられます。
前回の都議選の結果を受けてか、
政府は30兆円規模の経済対策を検討しており、
これが自民党の支持率アップに繋がり、
また昨年の給付金配布の時のように、
株価に影響してくるのかどうかが、
円の動きを左右するのではないかと見ています。
そして最後に
気になるニュースがありましたので、
ご紹介致します。
直近の注目トピックス
著名投資家のウォーレンバフェット氏が、
先日のCNBCの番組内で、
今回の新型コロナウイルスよりも
さらに酷いパンデミックが起きるだろうと
確信していると発言していました。
彼はいつも直接的な言い方を避けた形で述べますので、
真意は分かりませんが、
パンデミックに対して警戒すべきというものではなく、
それらを使って利益を上げている人たちに
注意しろというような意味合いにも聞こえました。
さらに、最近は中国政府が
大手IT関連企業に対して締め付け強化をしており、
DiDiに対してのプライバシー規制の強化、
tiktokのバイトダンスの上場延期、
また昨年はアリババ傘下の
アントグループの上場も
突然中止となる等しております。
これはアリババのジャック・マー氏が、
昨年、中国当局に対して批判的なコメントをし、
それに対して習近平国家主席が激怒したことで、
行われたこととされています。
そしてその後ジャック・マー氏は
表舞台から姿を消していました。
しかし、この件に限らず、最近の中国共産党は、
様々なデジタル企業に対して規制を強化しています。
恐らくこれは中国共産党が
元々はeコマース事業に関して重要視しておらず、
軽視していたところ、ここ最近急激に伸び始め、
政府が管理し切れないほど巨大化していったことで、
規制の強化に繋がっていったのではないかと思われます。
ただここで気になる点があり、
上述のウォーレンバフェット氏が率いる
バークシャーハサウェイの副会長である
チャーリー・マンガー氏が、
中国共産党のジャックマー氏に対する粛清を
称賛した発言をしました。
真意は分かりませんが、
投資家の間では様々な憶測を呼んでいます。
中国がデジタル企業を規制することで、
中国経済に悪影響を及ぼすにも関わらず、
上場中止等のような規制強化をしている中、
ジャックマー氏に対する
中国共産党のやり方を称賛して何の得があるのか?
アリババやDiDiは
ソフトバンクが大量に株式を保有しているので、
ソフトバンク潰しを
米中両国で行おうとしているのか等、
様々な憶測があります。
この辺りのことが近い将来、表面化してきた時は、
かなり大きなことに発展しそうに思われますので、
引き続き注視していくべき内容だと見ています。
以上、何か参考になれば幸いです。
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