日銀総裁の円安に対する本意とクロス円の今後
こんにちは、北田です。
先週はFOMC、BOE政策金利発表、
SNB政策金利発表、ECB緊急会合、
そして日銀金融政策決定会合と
忙しい1週間でしたね。
これらのことによって
為替市場はもちろんですが、
株式市場、債券市場、
仮想通貨市場等も大きく
上下動した1週間だったと思います。
ただ、その大変動の要因となる
一番のきっかけは、
先々週の米消費者物価指数です。
これにより、相場全体、
そしてFRBの今後の政策も大きく
変わることとなりました。
各国中央銀行の金融政策
3月分、4月分の
米消費者物価指数から、
インフレピークの
兆しが見られており、
今年後半、来年にかけて、
今のインフレは、
徐々に収まっていくだろうと
各方面で見られていました。
それに付随して、
FRBとしても、
6月、7月に関しては
50bpの利上げ、
9月は一旦利上げ停止等という話も
出てきていました。
※bp(ベーシスポイント):金利の表示単位で、0.01%のこと。
ところが、5月分の
米消費者物価指数で、
3月分の+8.5という数字を超えた、
+8.6という数字となり、
40年ぶりの伸びという
結果になったのです。
これにより、まだインフレは
ピークに達していないことが明らかになり、
相場や市場関係者等を驚かせました。
さらにその後に発表された
6月米ミシガン
大消費者信頼感指数速報値が
過去最低の数字となり、
景気後退説も一段と
深刻化されることに。
これらのことから、
FRBのさらなるタカ派政策、
そして景気後退懸念により、
先週は株価が大きく
下落することとなったのです。
また、
ブラックアウト期間での
出来事だったこともあり、
FRB関係者から何か
声明が出るということは
無かったのですが、
急遽今後の
利上げ方針予想が大転換し、
75bpの利上げ、さらには100bpの
利上げ予想まで出るようになりました。
FOMCでの利上げ幅は
当初の50bpではなく、
75bpとなりましたが、
とはいえ、市場では100bpの
予想も出ていたことから、
逆に今回は
75bpの利上げが好感され、
FOMC当日、米国株は
上昇という流れに。
しかしながら、
その後の5月米小売売上高や
6月フィラデルフィア連銀製造業景況指数等で
相次いで悪い数字が出てきたことで、
改めて景気後退が意識され、
再度米国株は下落する相場と
なっていきました。
またこういった現象は
アメリカだけではなく
EU、イギリス、
オーストラリア等でも起きており、
さらに先週はスイスまでも
インフレ対策の為に
15年ぶりの利上げに
踏み切ったのです。
一方日本では、
先週の日銀金融政策決定会合で
金融緩和継続が改めて示され、
各国の中央銀行との政策の違いが
浮き彫りとなりました。
円安か円高か、日本の政策について
一部これに関して日本国内で
批判が出ていますが、
日本のCPIは2.5と、各国と比べて
依然と低い数字になっています。
またこの数字は
既に携帯料金の値下げ分も
剥落している中での数字ですので、
黒田日銀総裁が
述べられている通り、
日本では金融引き締めに
移行する時期ではないでしょう。
また、さらに円高誘導を
求める声もあるようですが、
日本は変動相場制である以上、
これは市場に任せるしかありません。
むやみやたらに
日銀が為替誘導すると、
それは変動相場制を否定し、
固定相場制的な考えに
移行することにもなりかねませんので、
やはり誘導も含めて
するべきではないでしょう。
また現在の物価高騰の要因は、
これも黒田日銀総裁が
以前から再三述べている通り、
あくまでも、
コストプッシュ型のインフレであり、
円安が主な原因ではなく、
原油や資源価格の高騰によるものですので、
仮に円高に誘導したところで、
根本的な解決にはなりません。
参議院選挙を控えている中、
円安が物価上昇の原因だという
誤った考えが広まっていますが、
どうか岸田政権には、選挙のために、
この誤った考えを
得意の「聞く」ということをせず、
財政政策のほうで、
道筋を付けていってほしいと、
個人的には思います。
また野党議員もメディアも、
岸田政権に対して批判できないことから
黒田日銀総裁の
揚げ足取りをするのではなく、
冷静に今日本にとって
何が必要なのか、
そういった観点で選挙に
臨んでほしいと思います。
さて、その上で
各通貨を見ていきましょう。
米ドルについて
前述の通り、
先週のFOMCで
75bpの利上げをしましたが、
さらに今後の利上げペースとしても、
7月にさらに75bp、その後も50bpと、
歴史的に見ても
急速な利上げを主張している
FRB関係者が多い状況です。
ただ同時に、アメリカでは、
小売売上高や住宅関連指数でも
軒並みマイナスに落ち込み、
アトランタ連銀の4~6月期のGDPは
0成長という見通しも出ており、
既に景気後退入りしている可能性も
出てきている状況。
今後のFRBの政策として、
急激な利上げに市場が
耐えられるのかどうかを見極めながら
利上げ幅やQTの規模を
決めていくことになるでしょう。
急激な金融引き締めになろうとも、
景気後退になろうとも、いずれにせよ、
米国株としては、なかなか
厳しい状況が続くのではないかと思います。
その上で今週月曜は
米国市場が祝日で
休場となっていますが、
半年に一度のパウエル議長の
議会証言が控えており、
また、
リッチモンド連銀総裁の講演、
サンフランシスコ連銀総裁の講演、
シカゴ連銀総裁の経済見通し討論、
さらに、セントルイス連銀総裁の
金利に関しての討論等も予定され、
加えて、中古住宅販売件数、
新築住宅販売件数等の
重要指標発表も控えていることから、
これらの結果や発言内容によっては、
またドルが大きく
売買されることとなりそうです。
ただここ最近の相場は
大幅な利上げ政策による
ドル買いの反面、
景気減速による
一時的なドル売りも
同時に見られる為、
特に各指標発表には
一旦の調整が入る局面もあるという点に、
注意する必要があります。
ユーロについて
次にユーロに関してですが、
前述の通り、先週イタリア等で
国債利回りが急上昇したことを受け、
ECB緊急会合が開催されました。
ここでは、国債利回りの
格差拡大への対応として、
PEPPで購入した債券の
満期償還金再投資に
柔軟性を適用する方針が示され、
これにより、今後の積極的な
利上げができにくくなったと捉えられ、
ユーロ売りとなりました。
ユーロ圏内でも、
高いインフレが進んでおり、
先週発表された
ドイツCPIに関しては
前年比+7.9と依然として
高い数字が続いています。
前回のECB政策金利発表で、
7月1日に資産買い入れを終了、
そして同月に0.25%の
利上げの意向を示しているものの、
成長見通しを引き下げており、
ECBも、インフレと景気後退の中で、
難しい判断が迫られていきそうです。
まずは23日のEU首脳会談、
ECB議事要旨公表等の内容に注目ですね。
ポンドについて
次にポンドですが、
先週のMPCでも追加利上げとなり、
5会合連続の利上げとなりました。
イギリスでは前回のCPIが9.0と
アメリカ以上に高い数字が出ており、
イギリスでもインフレ対策として
今後も積極的な利上げが予想されていますが、
GDPが2ヶ月連続で
マイナス成長となっており、
さらにEU離脱の際に決められた
「北アイルランド議定書」の一部について
イギリス側が
一方的に変更する法案を
議会に提出したこと等で、
今後はEU側と
関係悪化懸念等が浮上し、
思い切ってポンドを買っていけるような
状況ではなくなりました。
その上で今週は
22日にCPIを控えており、
予想では9.1と前回よりも
高い数字となっていますが、
結果がどうなるかで
また大きくポンドが
売買される可能性があります。
豪ドルについて
次に豪ドルに関しては、
RBAが先々週に予想を
上回る50bpの利上げを行いましたが、
5月に政権交代した
労働党のチャーマーズ財務相が
住宅購入者にとっては、
利上げは好ましくない
というような発言もしており、
今後の積極的な利上げは
一旦は手控えられる可能性があります。
その上で今週は、
ロウRBA総裁の講演や討論会、
また議事要旨も控えている為、
まずはこちらの内容に注目しながら
豪ドルを触っていくと良いでしょう。
NZドルについて
次にNZドルですが、
先週発表された1-3月期GDPが、
市場予想を下回りましたが、
中国、上海のロックダウンが
解除されたことで、
経済活動の再開に伴う
景気回復等も期待されます。
また資源国としての貿易黒字等も
買い要因となりそうです。
さらにNZ準備銀行も
金融引き締めを継続しており、
これがNZドルの下支えとなって
推移していくでしょう。
スイスフランについて
次にスイスフランですが、
スイス国立銀行が予想外に
政策金利を引き上げました。
スイスでもインフレが懸念されており、
0.5ポイント引き上げマイナス0.25%としました。
またスイス中銀としては、
今後のインフレ見通しも引き上げており、
今後さらなる利上げとなる
可能性も十分にあります。
またさらに為替レートに関して
スイスフランが過度に上昇すれば、
外貨を買う準備もあり、
逆に過度に下落するなら
外貨を売る準備もあるとし、
為替介入を匂わせた発言もあり、
今後スイスフランを扱う際は、
急激な為替変動の可能性もありますので、
注意が必要です。
また今回スイスが他国に追随して
利上げをしたことで、
ますます円売りが加速する
後押しになったとも言えます。
日本円について
そして最後に円ですが、
先週財務省、金融庁、
日銀との三者会合が開かれ、
円安懸念の声明文が出されたことで、
一時的に円安対策するのでは?
という思惑から、
一旦円買い動意の相場となりました。
ただ先週末に開催された
日銀金融政策決定会合では、
異次元の金融緩和の維持が示され、
その後の黒田総裁の会見でも、
イールドカーブ・コントロールの
一部修正との噂に関しても否定され、
2%の安定的な物価目標達成の為に、
緩和政策を継続していく旨が示されたのです。
前述の通り、
日本での消費者物価指数は2.5、
コア指数では2.1と
各国と比べてさほど
大きな数字にはなっていません。
よって日銀が金融引き締めに
政策変更する根拠もありません。
イールドカーブ・コントロールの
一部修正に関する噂に関しても、
さすがにゼロ金利政策や
金融緩和政策を修正することは
できないから、
昨年に長期金利の変動幅を
±0.1%から±0.25%に
拡大した時と同様に、
せめてイールドカーブ・コントロールの
修正をすることで、
これは金融引き締めには
当たらないという建前で
さらなる修正が行われるのではないか
という思惑から来たものですが、
これに関しても
完全に否定されたということで、
円高対策をすることは
ほぼ皆無になったと言えます。
またそもそも円安に対する
対応策は非常に難しく、
円買い介入は
既に持っている外貨を売って、
円を買うという行為になるので、
上限が決まっているのです。
現在の日本の外貨準備高は
約150兆円程となっており、
これが上限ということになります。
民主党政権時代に
円売り介入をしていた
時期がありましたが、
これは外貨を買って
円を売ればいいので、
理論上円を刷りまくれば、
無限にできるということに。
仮に万が一、
日銀が円買い介入をしたとしても、
150兆円上限では市場に勝てるはずありません。
歴史的に見ると
1998年に円買い介入をした時期がありましたが、
逆にジョージソロス氏が
円売りを仕掛けてきて、
それに付随して他のトレーダーも
乗せてきたことで、
結局円買い方向には
いかなかったという歴史があります。
ですので、
円売り介入ならまだしも、
円買い介入では、
市場に勝てるはずありません。
仮に日銀や政府を説得して
円買い介入するように求めたところで、
日銀が市場に勝てるはずもなく、
負け戦をさせるだけとなります。
ですので、今一部の人達が
円買い介入を求めたり、
円安批判を日銀にしていますが、
以上のことから、
日銀に淡い期待を持っても
無意味ということなのです。
そしてその上で
今週は議事要旨公表、
そしてCPIが控えています。
また日本では参院選挙も
控えているということで、
株式市場では特に
自民党が訴える政策に関連した
銘柄等が物色される可能性もあります。
ということで、
各通貨の状況と見通しを
解説しましたが、
ファンダメンタルズ情報は
常に変化していますので、
ご自身でも常に
アップデートしながら
トレード、投資をしていくと
また成績も変わってくるでしょう。
以上、何か参考になれば幸いです。
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