ドル“買い”からドル“売り”に変わった要因について

2022年4月12日

kitada_20220120

こんにちは、北田です。

トンガでの噴火が
日本にも津波として影響しました。

今回の噴火により、
食料が生産できない地域が発生したり、
海運にも影響が出たり等ということになれば、

さらなる食料品価格の高騰、
資源価格の高騰や不足等も
より顕著になる可能性もあります。

そしてこれが、
今後の相場にどのような影響があるかも
考えておく必要があります。

特に相場の動きに関していえば、
今年に入って、米国株、日本株ともに
下落が激しいですね。

特にグロース株、
日本市場ではマザーズ市場で
大きな下落が見られています。

さらに先週は
ドルも大きく売られた相場となっていました。

その背景として、まず年明け6日に、
先月分のFOMC(米国の金融政策を決定する会合)の
議事要旨が公表されたことが挙げられます。

先月のFOMCの結果による影響

FOMC議事要旨の影響としては、
利上げの早期実施、そしてバランスシートの縮小観測によって、
米国株下落、10年債利回りの上昇となりました。

ここでなぜドルが売られるのか、
疑問が出てくるかと思いますが、

利上げの部分に関しては既に織り込み済みで、
それを含めて年末以降ドルが買われてきていました。

元々今年の利上げ回数は、
3回から4回程度になるのではないかとは言われており、
それが織り込まれて相場も動いてきていました。

しかし、今回のサプライズは、
バランスシートの縮小の部分になります。

これまでコロナによって
FRB(米国の中央銀行制度の最高意思決定機関)は
国債を購入し、お金を市中に流していました。

しかし、インフレが加速し、
経済も戻ってきたということもあり、
昨年この国債購入金額を減らしていくことを決定しました。

さらに、前回のFOMCでは、
これまで購入してきた国債を売却し、
資産を減らしていくことも議論に上がったということです。

これはどういうことかと言うと、
市中からお金の量が減るということになります。

バイデン政権が昨年に給付金として、
一人当たり1400ドルを配り、

さらにFRBによる金融緩和で、
市中にお金が流れておりました。

これによっていわば株式市場にお金が流れ、
株価が上昇してきた背景があるのですが、

今回はこの市中に流れているお金を
減らしていくことになりますので、

株価が下落し、リスクオフ相場となり、
ドルが売られた形となりました。

このような背景があり、
今回はタカ派の内容でしたが、
結果としてドル円は下落した相場となりました。

上院銀行委員会・公聴会による影響

そしてさらに、
上院銀行委員会が開いた公聴会では、

パウエル議長の発言として、
金融政策正常化の時期について何も決定しておらず、
正常化への道のりは長い、との発言があり、

ハト派的な内容だったことも、
ドル売りへと繋がっていきました。

この辺り、矛盾しているように見えるかと思いますが、

議事要旨時は、リスクオフによるドル売り、
公聴会時は、ハト派色によるドル売りと考えれば、
整理付くのではないかと思います。

以上の流れを見ますと、
やはりパウエル議長自身は、
インフレと戦う意思はあまりなく、

ハト派的な考えから
変わっていないことが明らかとなりました。

消費者物価指数の影響

続いて、その後発表された消費者物価指数(CPI)では、
予想通り、前年同月比で+7.0%という数字が出てきました。

※消費者物価指数とは、
 消費者が購入するモノやサービスなどの
 物価の動きを把握するための統計指標。
 
※物価が上がれば景気は過熱気味、
 逆に下がれば冷え込み気味ということで、 
 “経済の体温計”の1つとされている。

これは39年ぶりの高さですが、
逆に言えば、予想通りだったということで、
ドル売りへと相場は反応しました。

これだけ高い数字が出れば、
ドル買いと考えてしまいますが、

既に高い数字は想定済みで、
案の定、予想と同じ数字だったということで、

こういったケースはさらなるドル買いは考えられず、
むしろ利益確定の売りでドルが売られることになります。

米ベージュブックから見る影響

※米ベージュブックとは、アメリカにある
 12の地区の連邦準備銀行がまとめた「地区連銀経済報告」で、
 表紙の色がベージュ色なので、このように呼ばれます。

そしてさらに米ベージュブックでは、
一部の地域でインフレが鈍化した数字も
出てきたことが明らかとなり、

往来パウエル議長が言っていたように、
年内にインフレがピークアウトすることが
示唆された形になりました。

※ピークアウトとは、
 頂点に達し、それ以上は上がらない状態。

また中国でもCPI、
PPI(生産者物価指数)の伸びも大幅に鈍化しており、

アメリカ以外の地域でも、
インフレがピークアウトする兆候が
見られ始めてきています。

生産者物価指数の影響

さらに米生産者物価指数では、
前年比で+9.7%という高い数字が出てきましたが、

前月比で+0.2%と、伸びは予想以上に低下したことから、
ハト派のパウエル議長が肯定されるような内容になったことも、
さらなるドル売りへと繋がっていきました。

※生産者物価指数とは、生産者が出荷した製品や
 原材料などの販売価格の変動を調査・算出した経済指標。

アメリカの金利事情と相場の影響

また現在のアメリカの実質金利は
マイナスを推移しており、

最近のトルコリラ安を見ればお分かりの通り、

いくら高い金利の通貨であっても、
それ以上にインフレが進んでいれば、
その通貨は売られることになります。

アメリカも、現在はFF金利で0~0.25%に対して、
インフレ率は7%ということで、
実質金利は大きなマイナスとなっています。

※FF金利とは、フェデラル・ファンドレートのこと。
 フェデラル・ファンドとは、 
 米国の銀行が連邦中央銀行に預けている無利息の準備預金。

ですので、
これまでドルが買われてきたこと自体が異常であり、
売られて当然とも言える状況です。

さて、その中で
いよいよ3月に利上げが予想されている状況ですが、
まずは今月27日のFOMCに注目ですね。

以上、何か参考になれば幸いです。

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