投資業界に起きるシンギュラリティとは

2021年11月4日

昨今、ニュースでも取り上げられるようになった「シンギュラリティ」という言葉を、あなたは聞いたことがありますか?

シンギュラリティとは、一言でいうとAIが “ 自ら ” 人間よりも賢い知能を生み出す現象です。

AIのほうが人間よりも正確に仕事ができるようになり、AIのほうが投資で稼げるようになる。そんなAIが人間の力を超える瞬間を、シンギュラリティと呼びます。

これは、遠い未来の話ではありません。

実際、一部の投資ファンドではAIを投資に用いて、すでに人間以上の成績を叩き出しているとも言われているんです。

そこで今回の記事では、投資業界にシンギュラリティが起きるとどんなメリット・デメリットがあるのか、詳しく解説していきます!

AIの存在は私たちの想像よりもずっと身近になっているので、この記事を他人事と思わず、ぜひ最後までお付き合いくださいね。

投資業界におけるシンギュラリティとは

AI(人工知能)と聞くと、人間の仕事を代替するもの、あくまで一部の作業を効率化するもの、といったイメージを持つ方もいるかもしれません。
しかし、AIの進化は凄まじく、私たちの気づかない間に驚異的な進化を遂げているんです。

その瞬間こそがシンギュラリティ。

実際に、アメリカの未来学者であり、人工知能研究の世界的権威、カーツワイル博士によると、人間の脳は100兆個の極端に遅いシナプスしかなく、2029年には、すでにAIの思考能力が人間の脳の演算能力をはるかに超えるだろう、といわれています。

さらに2045年には、わずか10万円程度のコンピューターですら、人間の脳の100億倍に相当する演算能力になると予測されています。

通称「2045年問題」とも呼ばれ、AIテクノロジーの発展は特に注目されているのですが、なぜテクノロジーが成長するとシンギュラリティは起こるのでしょうか。

それはAIが、ディープ・ラーニング(深層学習)を実現できるようになったからです。

ディープ・ラーニングとは・・・
人間が手を加えなくても、コンピュータが “ 自動的に ” 大量のデータから、その特徴を発見する技術のこと。

今までのAIは、与えられた情報に当てはまったものだけに対応してきました。
しかし、ディープ・ラーニングが可能になってから、AIはインプットした情報を元に自ら答えを考えられるようになりました。

分かりやすく例えると、昔のAIは、言われたことだけできる「作業が得意な社員」で、ディープ・ラーニングができるAIは、自ら考えて答えを出す「腕営業マン」といったイメージです。

AIがディープ・ラーニングをできるようになった結果、2016年には、Googleの傘下であるDeep Mind社のAIが、囲碁の世界チャンピオンに勝ってしまう衝撃事件が起きました。

この大事件をきっかけに世界的なAIブームが到来し、今日の隆盛へとつながっていきます。

人間界のトップに勝ってしまうほど、確実性の高いデータをはじき出すAI。
今となっては多くの現場で、AIが人間のサポートをしてくれていますが、それと同じようなことが今、投資業界にも起きようとしているのです。

シンギュラリティが起きると投資業界はどうなる?

実際に投資業界にシンギュラリティが起きると、どのような変化が生まれるのでしょうか。

すぐに予想されるのは、資産運用のハードルが圧倒的に低くなり、多くの個人投資家が今よりも簡単に資産を形成していける未来です。

今、本格的な資産運用を始めるなら、ファイナンシャルプランナーや信託銀行などの仲介業者に、自身の収入や投資状況を伝え、ポートフォリオを組んでもらう必要があります。

専門のスタッフにお願いすれば「あなたにあった投資はこれですよ。この収入なら年利◯%を目指しましょう」とアドバイスをもらえるので、安定的に資産形成を始めることができます。

ですが、ファイナンシャルプランナーは、相談するだけでも1時間あたりの料金がかかってしまいますし、プランを組んでもらうなら、別途料金が発生します。

また、信託銀行を利用すれば、投資資金以外にそこまで費用がかかることもありませんが、言われるがままに投資先を選ぶ不安や、担当者と予定をわせる手間がかかってしまいます。

個人投資家がポートフォリオを組もうとすると、「手軽にできる」とは言い切れないのが現状ですが、シンギュラリティが起こると、こういった面倒な作業は全てAIが行ってくれる可能性があるんです。

わざわざ仲介業者を頼らなくても、自分の収入や投資状況をインターネットやアプリに打ち込めば、自動であなたに合った投資のジャンルや投資の先を紹介してくれるようになります。

また作業が簡単になるだけでなく、仲介業者に支払う手数料がなくなるため、今よりもコストを抑えて投資案件を知ることもできるかもしれません。

もちろん大きなリターンが狙える案件は、複雑な手続きや大きな初期資金が必要ですし、リスクも当然あるため、すべてをAIにまかせず仲介業者を頼ったほうがいい場合もありますが、ローリスクで気軽に取り組める案件は、もっと手軽になっていくと思います。

資産運用に難しい印象を持つ方がまだまだ大勢いるなか、AIに任せて取り組めるようになれば、始めるハードルは下がりますし、日本人にとって投資がより身近なものになりますよね。

身近なシンギュラリティ

そして実は、こういったAIにポートフォリオを組んでもらうサービスは、もうすでに始まっているのです。

今回は代表的な事例を3つほど紹介しますね。

ロボアドバイザー

CMでもおなじみのWealthNavi(ウェルスナビ)が、投資にあまり馴染みのない初心者の方にも簡単に資産運用ができる「ロボアドバイザー」というサービスを提供しています。

ロボアドバイザーとは、年齢や金融資産額などから、AIが自動で適した運用ポートフォリオを構築し、簡単に国際分散投資を始めることを可能にしてくれるサービスです。

銘柄も多く迷いがちな株式投資を自動でやってくれるのは、とてもありがたいですね。

また、資産運用によって受け取った分配金は、一定額以上になると、自動で再投資にまわしてもらうのも可能なので、分配金を引き出さずに再投資し続けることで「複利効果」による資産の成長が期待できます。

特定口座なども選択可能ですので、確定申告などわずらわしい手続きもなく運用できます。

AIスコア・レンディング

みずほ銀行とソフトバンクの合弁会社、株式会社J.Scoreのサービス、「AIスコア・レンディング」はご存知でしょうか?

ビッグデータとAI技術を活用して「AIスコア」と呼ばれる「金融的な信頼」を数値化し、貸付利率や契約極度額といった、ユーザーにふさわしい融資条件の参考値を提示してくれるサービスです。

今まで銀行で面倒な手続きをしないと分からなかった契約極度額が、アプリで知ることができるようになります。

つまり銀行の職員と面談をしなくても、「いくらくらいお金を融資てもらえそうか」がわかるんです。

実際に融資を申し込まなくても貸付利率や契約極度額の参考値が分かるのは、大きい買い物を考える際、出費の目安になるのでとても役立ちますね。

自動売買システム

最後にご紹介する身近なシンギュラリティは、FXの自動売買システム(EA)です。

トレーダーには馴染みのあるEAですが、今多くの開発者がAIをシステムに組み込もうとしています。

実際に一部の海外のファンドでは「HFT」というAIプログラムを運用し、実際に好成績を上げているそうです。
このHFTは、100分の1秒単位で売買注文を出せる高性能のプログラムによって、超高速で高頻度の取引を実現しています。

AIが起こす自動売買の可能性は、これだけではありません。

ディープ・ラーニングによって、AIに過去の相場をとことん学習させることが可能になりました。

少しだけ補足をすると、AIにただ相場を読み込ませても、何も学習しません。
「1時間で50pips」や「3日間以上の上昇」など、ある程度の条件をつけた相場を読み込ませることで、AIが共通する数値を導き出してくれます。

では、AIに読み込ませる相場の条件を「プロトレーダーのトレード履歴」にしたらどうなるか。

ウォーレン・バフェットのように億を稼ぎ出す一流のトレーダーが、実際にトレードをして勝ってきた相場を全て読み込ませたら、プロのトレードを完全再現するEAが完成すると思いませんか。

「そんなワケはない」と考えたかもしれませんが、ディープ・ラーニングができるAIなら、プロの裁量も相場観も数値化して、完全再現することが理論上可能なんです。

憧れのトレーダーの手法をシステム1つで完全再現できるなんて、とても夢のある未来ですね。

投資とシンギュラリティ:まとめ

今回は、投資とシンギュラリティについて解説してきました。
2045年にシンギュラリティは起きると言われていますが、実はもう身近なところで始まっているんですね。

「シンギュラリティ」という言葉が登場したときは、AIによって人間の仕事が奪われていくと、ネガティブなものとして取り上げられていましたが、実際はもっと明るい未来がやってくるかもしれません。

難しい資産運用や、ポートフォリオの構築がAIに任せられるようになれば、投資はもっと身近なものになるでしょう。

そしてFX業界においても、これからAIはますます勢力を伸ばしてくることは間違いないので、ぜひ期待を胸にテクノロジーの進化を楽しみにお待ちくださいね。