景気状況や外貨準備高から読み解く、いま注目すべき新しい通貨
こんにちは、北田です。
先週は、今後の利上げ観測や、景気後退懸念等を中心に、
相場全体が大きく動いた期間となりましたね。
3日に発表された9月ISM製造業景況指数で、
8月は52.8だったところ、
9月は50.9と予想以上に低下したこと、
また4日の豪準備銀行の政策金利を
予想では50bpの利上げだったところ、
25bpに抑えられたこと、
さらにJOLT求人件数も
大幅な下落という結果となり、株価は大きく上昇しました。
しかしながら、
5日発表のISM非製造業景況指数は強い数字が出てしまい、
特に雇用がかなり強い数字が出たことで株価は下落。
ADP雇用統計でも堅調な数字、
そして週末の雇用統計でも強い数字が出たことで、
さらなる株価の下落に拍車をかけた相場となりました。
また、OPECプラスが日量200万バレル減産との報道で、
原油価格が大きく上昇したことで、
インフレ懸念再浮上、利上げペース加速、
そして株価下落に拍車をかけました。
今後も引き続き、利上げペースを維持していくのか、
それとも減速させていくのかによって、
相場全体の動きは左右されるでしょう。
その上で各通貨を見ていきます。
米ドルについて
まずはドルですが、先週の前半では、
利上げペース鈍化の観測も出たことで、
米ドルについて、
10年債利回りが一時3.5%付近まで下落しましたが、
週末時点では再度上昇し、3.9%付近を推移しています。
これにより、
週の後半では再度ドルが買われた相場となりました。
最近の相場では、
金利上昇、ドル買い、株価下落、
金利下落、ドル売り、株価上昇
の傾向が見られますので、
以前とは違った法則で動いていることには
注意しておく必要があります。
また、経済指標においても、良好な数字が出れば、
基本的には株価上昇、ドル円上昇の図式でしたが、
少なくとも現在は、
良好な指標発表の数字は、利上げペース加速、
金利上昇、ドル買い、株価下落の動きとなっており、
この辺りの指標の数字とドルの動きの法則を
気をつけて見ておく必要があります。
今週はCPI、小売売上高、IMFの世界経済見通し、
そして、G20財務相、中銀総裁会合等も控えており、
内容によっては、相場を大きく動かす可能性もあります。
また週末の雇用統計もですが、
最近アメリカを襲ったハリケーン「イアン」の影響は、
まだ含まれていない数字になりますので、
この影響がどこまで相場に関係していくのか、
今後の指標の数字で、割り引いて見ていく必要もあります。
ユーロについて
次にユーロに関してですが、
まず、市場で話題になったクレディ・スイスのCDSの急騰や
株価下落等により、ユーロは売られていました。
その後、最大30億ドル規模のシニア債買戻しを発表し、
株価が上昇したものの、
欧州全体の金融機関の破綻リスクが高まってきていることは変わらず、
引き続きユーロ売り懸念は続くでしょう。
またロシア、ウクライナ間の紛争で、
現在NATO内でも亀裂が入っており、連携が取れていない状況になっています。
さらに、ノルドストリームの損傷に関しては、
色々な憶測が飛び交い、ロシアによるものではなく、
アメリカを通してポーランドが行った等の話も、
欧米の有名ブロガー達が記事にしています。
ノルドストリームが使えなくなり、困るのはロシアや欧州であり、
ロシアが損傷行為を行うことにメリットが、そもそもありません。
欧州、特にドイツに天然ガスを高値で売ることで、
国営のガスプロムは、ウクライナ侵攻前よりも
利益を増やしていることもあり、
損傷させたのは、ロシア以外の国という話が有力です。
またポーランドはここにきて、
ナチス侵略被害として、ドイツに対して185兆円を正式に賠償請求しています。
アメリカとしては、ドイツ等の欧州が
ロシアからの天然ガスの輸入に頼るよりも、
アメリカのシェールガスを購入して欲しいという思惑もあり、
ノルドストリームの損傷はアメリカにとっては、プラスになる話でもあります。
もしこれが事実なら、NATO内で武力攻撃があったことになります。
また、先日行われたイタリア総選挙では、
極右政党率いるメロー二党首が首相となることになり、
彼女はEUに批判的な立場の人で、EUの分裂が加速する流れとなっています。
このような状況下の中で、
ユーロは少なくとも買ってはいけず、
将来的にはユーロという通貨そのものの消滅も
視野に入れておく必要があると考えています。
ポンドについて
次にポンドですが、トラス首相の経済政策である
「トラスノミクス」はかなり評判が悪いですね。
家計の光熱費を2年間で2500ポンドに固定化したことや、
国民保険料や法人税の吹い上げを中止する等、大盤振る舞いですが、
結局、財政悪化の懸念が広がったことで、
株安、債券安、通貨安のトリプル安を招く結果となりました。
さすがにこれはまずいと思ったのか、
中銀によるポンド安の是正介入や、緊急利上げ観測、
緊急国債購入等により、
大きくポンドが買い戻された相場となりました。
ただ、QTは10月31日に延期されており、
次回の金融政策決定会合では、
125bpないしは150bpの可能性も浮上してきており、
これに対して市場がどのように反応するかは、
注目しておく必要があります。
イギリスの場合、日本と違い外貨準備高が非常に少なく、
日本は約180兆円あるのに対して、イギリスは約10兆円程しかありません。
日本の為替介入が話題になっており、
再度の円買い介入があるのではないかと見られていますが、
上限があるとは言っても、日本は世界2位の準備高を保有しており、
イギリスに比べるとまだ余裕がある状態です。
それに比べイギリスは、日本以上にインフレが深刻で、
インフレが進めば、その国の通貨安が進むため、
より買い支えることが困難となり、
さらに外貨準備高が日本に比べて圧倒的に少ないことを考えると、
機関投資家等は円よりも
ポンドを狙ってくる確率が高いのではないかと考えています。
ちょうど30年前の1992年9月に
いわゆるポンド危機というのがありました。
当時は、景気は大きく後退しており、失業率も大きく上昇、
そしてイングランド銀行は1日に2度も緊急利上げを行ったものの、
ソロス氏等によるポンド売りを止めることができなかったことがありました。
当時の欧州為替相場メカニズムには
参加していないという点での違いはあれど、
外貨準備高やインフレ動向等を見ていると、
円よりもポンドの方が狙われやすいという状況と言えますので、
ポンドを触っていく際は、特に資金管理に十分気をつけて
トレードする必要があると考えています。
豪ドルについて
続いて豪ドルですが、
先週RBAは25bpの利上げに抑えたということがサプライズとなり、
これが他の国でもいよいよ利上げペース減速になるのではないかという
一つの指標となり、株価が上昇する要因となりました。
RBAは各国に比べて一足先に利上げを開始し、
昨年11月には、イールドカーブコントロールを停止しました。
オーストラリアの国債利回りが上昇したことで、
各国の債券利回りも上昇して、株価下落へと繋がっていった背景があります。
今後利上げペースを鈍化させたオーストラリアのインフレや
景気の動向は、各国が非常に注目しており、
これらをもとに、各国が利上げペースを
調整していくことも十分に考えられますので、
豪ドルを普段売買しない人も、
RBAの動きやオーストラリアの今後のインフレ動向等に注目しておくと、
予想がしやすくなっていくでしょう。
円について
最後に円ですが、
先月の円買い介入の金額が2兆8382億円と公表され、
予想よりも低い数字だったことで、
円売りとなった場面もありました。
ちなみに、8月の日本の貿易赤字額が2兆8172億円となっており、
為替介入は実需の円売りを相殺する規模の金額でした。
今後も貿易赤字が続く以上、実需の円安は続くことになりますので、
為替介入にも限度があることが分かります。
そして気になることが、次の為替介入はあるのか、
それはどの水準なのかだと思いますが、
噂では1ドル145円ラインなのではないかという見方もあったものの、
実際に145円を超えても介入が行われていない状況を見ると、
財務省としては、どの水準のラインなのかというより、
急激な為替変動を好ましく思っていない可能性が見えてきており、
逆に言えば、急激な為替変動が見られなければ、
介入はしばらく無いという見方もできます。
また先月の介入では、恐らく
どこかのタイミングでアメリカ財務長官と話がついており、
米国債には手を付けないことで、
アメリカも許可をした形になったのではないかと見ています。
そうなると、米国債に手を付けなければ、
日本市場だけではなく、ニューヨーク市場や、
日本の休場日でも、
介入が行われる可能性もあるということになりますので、
その辺りに注意しながら売買していく必要はあります。
まとめ
ということで、各国通貨の状況を見てきましたが、
現在は、各国の外貨準備高の減少率が、
リーマンショック時を超える下落となっており、
為替介入もままならない状況となりつつあることも事実です。
ドル高、アメリカ一強は、世界の景気減速に繋がり、
それがアメリカにも跳ね返ってくる結果ともなり、
さらなる株価下落に拍車をかけることにも繋がっていきそうです。
このような背景をもとに、いかに有利にトレードを進めていくか、
これが相場で利益を出す為には非常に重要だと考えています。
以上、何か参考になれば幸いです。
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