20年振りの円買い介入がドル円相場に与える影響とは

こんにちは、北田です。

先週は、NYダウで年初来安値を更新した相場となりました。

WTI原油価格も80ドル割れと
ここ最近はコモディティ価格も軒並み下落していることを考えると、

現在はインフレによる株価下落というよりも、
景気後退による株価下落の様相が強いと見ることができます。

またロシア、ウクライナよりもむしろ
アメリカを含めたNATOとの対立で、緊迫度が一段階上がりました。

元々ドネツク、ルガンスクの地域は2014年に、
クリミアで独立した時と同様に住民投票が行われ、
一方的に独立宣言をしていましたが、

クリミアだけではなく、さらに2つの地域での独立となると、
西側諸国の非難が高まることを恐れ、
ロシア側も、国家承認はしていない状態が続いていました。

そして2022年2月にロシアが2つの地域を国家承認し、
また同時に安保条約締結したことで、
ウクライナ側からの脅威が高まったという理由で、

2月24日から、「戦争」ではなく、
あくまでも特別軍事作戦として争われています。

「戦争」というのはあくまでも宣戦布告が必要ですので、
今の状態は厳密にいうと「戦争」状態では無いということになるでしょう。

そしてここにきて、上記2つの地域に加えて、
ザポリージャ、ヘルソンの4州で
ロシア編入を問う住民投票が行われることになりました。

この4つの州がロシアの領土ということになれば、
ウクライナがロシアに対して攻撃を仕掛けたとみなされ、

これまで特別軍事作戦とされてきた状態から、
本格的な「戦争」状態へ移行することになります。

要は上記4つの州が、ロシアの核の傘に入るということになりますので、
核の脅威も一段と高まったと言えるでしょう。

また報道では、ロシアがウクライナ住民に対して
攻撃を行っているということばかり流れていますが、

ウクライナ側(NATOが提供した武器等含む)による
ドネツク、ルガンスクの住民への攻撃も同時に行われており、無視できません。

ということで、現在はインフレによる景気後退よりも、
第三次世界大戦の可能性を考慮した、
地政学的リスクにより相場が動いているとも言えます。

10月には中国共産党大会、11月にはアメリカの中間選挙が控えており、
相場の焦点は地政学的リスクとなりそうです。

以上を踏まえ、為替市場も見ていきたいと思います。

各国為替市場について

先週の主な出来事としては、
各国利上げラッシュ、そして日銀の円買い介入です。

まず注目されていたFOMCですが、
結果は予想通り75bpの利上げとなりましたが、

ドットチャートでは大幅に引き上げられたことで、
想定以上のタカ派的な内容となりました。

また同日、イギリスで50bpの利上げ、
スイスでもマイナス金利を脱し、75bpの利上げとなりました。

それ以外にも、ノルウェー、インドネシア、
フィリピン、台湾が利上げを行いましたが、

逆にトルコは100bpの利下げとなり、
同日に複数の国で政策金利が変更されました。

さらに同日、日本では1998年以来の
円買い介入が行われ、相場が大きく動きました。

円買い介入とは、 通貨当局が過度の円安進行を抑えるために、
外国為替市場で円を買う行為のことです。

この円買い介入は、偶然なのか、
1985年のプラザ合意と同じ9月22日に行われました。

今後は1ドル145円がシーリングライン、
つまり上限値となるかが注目されていくでしょう。

以上のように、先週は政策金利の変更や為替介入等、
相場を大きく動かす要因が多く発生しました。

その上で各通貨を見ていきます。

米ドルについて

まずはドルですが、前述の通り今回も大幅な利上げ、
そして今後の金利見通しも大幅に上昇したわけですが、

その要因は既に原油価格ではなく、住宅価格や賃金等にシフトしており、
インフレが収まらない可能性に注意が必要です。


特に住宅市場においては、
9月NAHB住宅市場指数は46と、予想以上に低い数字が出ており、

住宅市場に関しては既に、景気が半年間にわたり後退する、
リセッション入りしている可能性があります。

また先日のFOMCで、成長見通しも大幅に引き下げられ、
10年債利回りは3.6%まで上昇しましたが、

さらに2年債利回りは4.1%まで上昇しており、
逆イールドがさらに拡大しました。

ドルは、アメリカ同時多発テロ以前までは、
安全通貨として捉えられていましたが、

それが円やスイスフランにシフトしていき、
ここ数年は再度ドルが安全通貨として捉えられていますので、

金利差拡大によるドル買いだけではなく、
景気後退によるドル買いも考えておく必要はあります。

ユーロについて

次にユーロに関してですが、
ロシアによるウクライナ侵攻のさらなる激化により、

欧州経済全体の悪化懸念からユーロが売られ続けています。

大幅な利上げをしたものの、アメリカの例にならって、
それが景気後退への後押しになる見方もあり、

いずれにしても、ユーロは今後も弱い動きを見せるでしょう。

ポンドについて

次にポンドに関してですが、

トラス新政権となり、景気底入れの為に大型減税を発表したものの、
財政悪化が警戒視され、ポンド売りとなっています。

少なくとも今後も
買っていけるような状態ではないと考えます。

ただ、次回の金融政策決定会合を待たずして、
緊急利上げの話も浮上していることから、

ポンド売りのポジション調整には
気をつけておく必要も同時にあるでしょう。

円について

最後に円ですが、前述の通り、円買い介入が行われましたが、
円売り介入と違い、上限が決まっていますので、
大きな円高はあまり期待できないでしょう。

日本では、中国に次ぐ外貨準備高を保有していますが、
現在は150兆円程となっており、

外貨預金に関しては、20兆円ほどでありますので、
介入規模はこれが上限ということになります。

今回の介入は恐らく
外貨預金を取り崩して行われた可能性がありますが、

上限がある以上、ドル高、円安の動きは今後も変わらないでしょう。

また8月の日本の貿易収支が過去最高の赤字となっており、
実需的にも、ドル買い、円売りの方向は変わらないと見ることができます。

今後も再度の介入が行われる可能性がありますが、

恐らくそこが押し目となり、
買い時とみなされるのではないでしょうか。

以上、為替市場における各通貨を見てきました。

これまでインフレと、その主な要因である原油価格の高騰が注目されていましたが、
これが最近では既に変わってきており、

原油価格が下落しても、インフレは収まらず、
また景気後退に続いて、地政学的リスクが焦点となって相場が動いていますので、

この辺りは、相場の見方を切り替える必要があります。

以上、何か参考になれば幸いです。

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