再び売られる日本円……日銀総裁人事も買い材料とならないのはナゼ?
こんにちは、北田です。
先週は日銀の人事の思惑で、相場が右往左往した1週間でした。
6日月曜に、日経新聞が週明け早々(と言っても夜中2時)に
「次期総裁に雨宮氏に打診」という速報記事が出て、円が大きく売られました。
ただその後、政府側はこぞって否定し、円売りが収まりました。
そして次は週末に日経新聞が、
次期総裁に植田氏に起用する人事を固めたという報道で、
次は円買いに反応しました。
この動きは、植田氏の政策がどうというより、
黒田路線を引き継ぐと思われていた雨宮氏が辞退したことで、
円買いに反応したように思います。
植田氏は日銀審議委員を務めた経歴もあり、また過去の発言として、
「日銀は拙速な引き締めを避け、出口に向けた戦略を立てておく必要がある」
と、述べていたこともあり、
緩和解除を早期に実施することには慎重であると同時に、
YCCの撤廃に関しては、幾分前向きとも言えます。
今回の次期総裁に求められているのは、手腕やカリスマ性ではなく、
目の前のインフレや賃金に対して、適切に対応していく力です。
現在のFRB議長のパウエル氏も、バーナンキや、グリーンスパンとは違い、
目の前のインフレに対して、FRBメンバーの意見をまとめ、
そして適切に対応していることが求められています。
奇をてらった手法を求められているわけではなく、
淡々とインフレに対する適切な対応が求められているわけです。
次の日銀の次期総裁も、そういった人が適切であり、
逆にカリスマ性等は求められていないと考えています。
ですので、以前にもお伝えしましたが、今日銀がやるべき仕事は、
2%の安定的な物価目標の達成であり、そして賃金アップです。
これは日銀、政府ともに同じ目標を掲げて
取り組んでいるものになります。
この目標を踏まえて、粛々と取り組んでいける人が、
今回の日銀総裁としてふさわしいと言えます。
今の時期は、雨宮氏になると円売りだ、
白川総裁時代の副総裁を務めた山口氏になれば円買いだ、等、
誰が起用されたら相場はどう動くとか、
金融緩和が早期に変更されるのかとか、色々な思惑が出てきます。
確かに瞬間的に相場は反応するかもしれませんが、
日銀のやるべき仕事は、誰が総裁になっても変わらず、
長期で見れば、相場も大きくは変わらないと考えています。
今後賃金アップによる安定的なインフレが見られれば、金融緩和縮小ないしは、
YCCの撤廃等という話になってきますが、
それまでは、金融緩和継続という姿勢は変わらないでしょう。
自分としては、ドル円が今後は上昇に転じていくスタンスに変わりありません。
加えて、もう一つ円売りの要因となっている数字が出てきました。
先週発表された日銀の介入実績で、昨年10月分は6兆3499億円となり、
過去最大を更新していることが判明しました。
9月には2兆8382億円でしたので、
2ヶ月の合計で約9兆円の円買い介入が行われたことになります。
ただ、昨年の貿易赤字は過去最大の19兆9713億円でした。
介入金額の9兆円を差し引いても、10兆円の赤字を打ち消すことができていません。
これはどういうことかと言いますと、
貿易赤字によって介入以上の円売り圧力が発生し、円売りを支えている状態にあると説明できます。
貿易赤字は円売りの要因になるからです。
つまり、貿易赤字により、円売り圧力は今後も続くと考えられます。
米ドルの今後の動き
逆にドルに関しては、
今週アメリカではCPI、PPIの発表があります。
今までのCPIでは、自動車価格も含めて下落傾向でしたが、
自動車価格が再度上昇しているというデータが出てきています。
また前回の雇用統計を受けて、賃金の部分がどうなっているかも、
今後のインフレ率を占う上で重要な手がかりになっています。
これにより、一部では、
今後の利上げ政策について、1回ないしは2回でいったん利上げ停止とするスケジュールに、
やや暗雲が立ち込めてきています。
ターミナルレートを6%と予想している機関投資家もいるようで、
どのように動くかが、ドルの行方を大きく左右していきます。
パウエルFRB議長は先日のFOMC後の記者会見で
年内利下げの可能性を否定するとともに、
エコノミッククラブで、好調な雇用が続くなら、
ターミナルレートが上がる可能性にも言及しました。
今後のCP、PPI、また雇用や賃金の数字でドルの行方が変わってきそうですが、
少なくともドル円下落一辺倒に賭けていくのは、危険だと考えています。
その他の通貨の動き
他の通貨に関してですが、
まずユーロは、インフレ率が鈍化傾向で、
利上げの一時停止の可能性が浮上してきている状態ですが、
やはりFRBと同様に、タカ派的な発言も続いており、
ユーロを売っていくことは難しい局面だと考えています。
ポンドに関しては、前回のBOE政策金利発表で、利上げ幅を縮小しましたが、
イギリス経済の先行きが不透明で、ポンドも同じく、買うのも売るのも難しい状況です。
まずは15日の消費者物価コア指数に注目です。
豪ドルに関しては、16日に1月雇用統計が控えていますが、
中国の経済再開による原油価格の動向を見ながら、豪ドルを買っていきたい局面と考えています。
ただアメリカによる中国包囲網により、
オーストラリア経済にも悪影響を及ぼす可能性もあり、
これらの報道には注意が必要です。
カナダに関しては、利上げ停止が示唆されており、
引き続きカナダドルは売られやすい状況が続くと考えています。
以上、何か参考になれば幸いです。
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